⑤【神社の事】

【神社】

 その時でした。
 「ねぇ」。
突然の掛け声。
後ろを振り向くと、六十歳前後のおばさんが田んぼの中に立って、微笑みながらこちらを見ています。
強風で倒れた稲を起こす作業をしていた様でした。
先ほどの女子高校生達とのやり取りが、聞こえていたのでしょう。
そのおばさんと目が合うや否や、彼女はサササッと忍者のように近寄って来ました。
「それは、そこの神社の事ではないかなぁ。」
と、声を投げ掛けてきたのです。

南大隅町 諏訪神社
 ちよっと横に目を向けると、そこには小さな神社がありました。
当たり前ですが、その神社の入り口の鳥居が見えます。
珍しい物を見た時の驚きでした。
なんと、鳥居が二つ横に並んで立っていたのです。
その風貌は、なんとなく願いを聞いてくれそうにも見えました。


 彼女は、願いを叶える神社だと言い、参拝の仕方まで教えてくれました。
本当に願いが叶うかどうかは分からないけれど、願う人が多い神社だと話してくれました。
もちろん神社なので、神様にお願いする人が多いのは当たり前ですが。

 彼女は、いろいろ教えてくれて、
「右の鳥居から入って参拝し、左の鳥居から出るすると願いが叶うらしい。」
「1日1回だけ、間違ったら次の日に来てまたやる。」
と。
『ん・・・らしい?』

 彼女が中学生、高校生の頃、女の子達の間で恋愛成就として流行でやっていたらしく、かなりの確率で成就したらしいとの事でしたが、今そういった事で参拝する人は、ほとんど見かけなくなったそうです。

「おばさんは、願った事あるんですか?」
尋ねました。
「その時は信じてなくて、今は 恋愛する齢でもないからやってないわよ。」
『恋愛前提かい」。
心で呟く(つぶやく)私がいます。


【願ってみる】

 母は滝だといっていたけれど、この諏訪神社と勘違いしたのかもと考えました。
願いの滝は母のまったくの勘違いで、願いを叶えてくれる神様がいるのはこの神社に間違いないと、はっきり断定したのではありませんでしたが、もしもの事を考え、一応参拝する事にします。

 彼女に言われた通りの参拝の仕方を終え、境内を出ると気付いてしまいました。
『家内安全、良い事がありますように』。
こんな全く具体的で無ない、一般的なお願いをしてしまっていたのです。
これでは、たとえこの願いが叶ったとしても、何が叶ったのか気付きようが無いかも知れません。
しかも、一日一回と云う彼女の言葉を守るならば、明日以降にここを訪れて、再びお願いするしかないのでした。
それどころか、明日の今頃は東京に居るはずですから、ここで参拝など出来るはずも無いのです。

 出口で失敗を悔やんでいると、なんとなく視線を感じました。
その感じた先には、先ほどのおばさんがニコニコしながら、こちらを見ています。
彼女に手お振りながら近寄りました。
先ほどのお礼を言っていなかった事に気付き、改めてお礼を言おうとしたのです。
「願いが叶うと良いね」。
気さくな笑顔に感謝、頭を下げました。
自分的には、お願いの内容が失敗だった事を、胸の内に収める事にします。

 『そうだ、滝の場所を聞かないと』。
一瞬忘れかけていた滝の場所を、彼女に尋ねました。
「今日は 台風の後で水かさも増しているので危険だよ。」
「車では入って行けないから、整備されてない狭い土手道を1キロ以上歩かなければいけないのよ。」
「今日は止め時なさい!。」

 周りの荒れた様を観れば、当たり前の事を言っていると理解出来ます。
 『ひぇ~、結局、願いが叶うのかどうかを知るどころか、そこに行く事さえ許されずに帰らなければならないのか』。
それどころか、滝自体も観る事が出来ないのです。

 今更ながら母が何をお願いして、何が叶ったか言っていない事に気づきましたが、悩んだ挙句、忠告通りに今回は諦める事にしました。

 
次回は、再び この滝に訪れるはなしです。





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