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② いとこの事

kage

2013/09/28 (Sat)

 【 行方不明 】

 私が6歳の頃の事です。
親戚の中で ちょっと強面の人がおりました。
いとこ達の中で一番年が上であった彼は、見た目がぐれた感じの人です。
近くに住んでいた彼は、たまに 私の家に来る事がありました。

 私は、家から出て 外で遊ぶ事が少なかった子供です。
その日も中庭で地面に絵を描き、ひとりで遊んでいました。
そこに、彼が やって来たのです。

 まだ、二十歳前なのに くわえタバコでやって来ました。
私は無意識に、彼にニコッと微笑みます。
彼は、玄関に続く登り階段で立ち止まり、微笑を 返してくれたのでした。
そして私を 手招きで 呼び寄せます。
 
 私が近づくと、二度三度、手の平に何かを差し出すそぶりをしました。
何かをくれるのかと期待した私は、手の平を 彼の前に差し出します。
すると、彼は口にくわえていたタバコを、火の付いたま手の平に置いたのでした。

 呆気にとられた私は、数秒間 そのまま 動けなかったのです。
激痛に耐え切れず 手を 何回も振りましたが、中指と薬指に貼りついた吸殻は なかなか取れませんでした。
このあと、一週間ほど指の痛みは 続きます。
彼は用が終わると、何事もなかったかのように 澄まして帰って行ったのでした。

 一時間ほどして 庭で痛みに堪えてうずくまっていた私を見つけた父は、やけどと知るや否や、水道の水で随分と長い間冷やし続けます。

 彼はこの後、家出をし、行方不明になりました。

 消息が判って、再び 彼と会ったのは、その日から 三十年近く経ってからの事です。
やや緊張気味に彼の元を尋ねた私が見たその姿に、その緊張はあっという間に消え去りました。
あれだけ強面(こわおもて)でイカツイ風貌が、微塵も無かったのです。
その生活環境や物腰に、悲哀さえ感じてなりませんでした。
どんな苦労とどんな生活をして来たのか解らないけれど、彼の祖父や祖母、そして自分の父親の死ですら知らずに生きてきた人生が、切なくも寂しく思えてきたのです。

 この時のヤケドの痕は、薄くはなっても未だに残っていて、この事が原因で、彼のその後が決まってしまったのかも知れないと考えると、更にやるせない気持ちになるのでした。
この痕を見るたびに その事が 甦るのです。

 次回は、三角ベース野球のことです。





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